2016年8月23日火曜日

通貨発行で国の借金を返して良い理由

新聞マスコミは相変わらず「国の借金ガー」の啓蒙活動に熱心です。しかしそもそも「借金はなぜ返す必要があるか」という根本的なことは問わない。深く考えず、脊髄反射で「国の借金ガー」と言っているだけなのでしょう。

借りたものは返さねばならない約束だから。おカネを返さないと貸した人が困るから。そうであるなら、政府が通貨を発行して返しても約束はきっちりと果たされます。たとえば電卓を借りた人が、まったく同じ電卓を買って返しても、電卓を貸した人は困らない。貸し借りの清算は成り立つのです。政府が通貨を発行して返したとしても、おカネを貸した人は何も困らないのです。

国債を買っているのは主に銀行などの金融機関です。ですから政府は銀行から借りたおカネを銀行へ返済するわけですが、政府がおカネを発行して銀行へ元本と利息を返済したとしても、銀行は何の損もしません。しっかりと決済は完了するし、帳簿上も何ら問題はありません。そのうえ銀行は利益も予定通り得られます。前提条件は必要ありません。おカネを返せば約束は履行されます。

そして実際、日銀が金融緩和の一環として、「おカネを発行して」銀行に支払い、国債を買い取っています。「おカネを発行して、そのおカネで国債を買っている」。それでも決済は完了しますし、銀行は利益を得ますので、銀行は儲かるわけです。

つまり、おカネを発行して政府の負債を返済しようが、国民から税金をぶんどって政府の債務を返済しようが、おカネを貸した銀行にとっては、どっちもまったく同じなのです。貸し手は元本がきちんと返済され、利息が得られれば同じ儲けが出るのです。

もちろん、企業や個人にそんなことはできません。企業や個人には通貨発行権がありませんから、おカネを発行して返済するのは不可能です。しかし政府(日銀も含めて)には通貨発行権がありますから、それが可能なのです。通貨を発行する権利、それこそが国民の最大の主権とも言えるでしょう。その主権を行使するかどうかは、国民あるいはその代表者たる国会の決めることです。

では、どんな基準で通貨発行の是非を決めるべきか。無制限におカネを発行すれば問題がインフレが発生します。過度のインフレは経済にとって好ましいことではありません。ですから、政府がおカネを発行して債務を返済する場合は、容認されるインフレの範囲において可能であると言えるのです。この容認されるインフレの範囲がインフレターゲット2%です。

おカネを発行することは、禁じ手でもなければ不道徳でもありません。ですから日銀は年間80兆円のおカネを発行して国債を買い取っています。おカネを刷って買うのです。しかし当たり前に行われています。なぜなら通貨発行は政策であり、政治であり、道徳の問題ではないからです。システムなのです。

発行済み国債の三分の一は日銀が買い取りました。日銀が国債を銀行から買い取った時点で、銀行と政府の貸し借りの関係は清算されます。こうして、政府が銀行から借りたおカネの三分の一は、銀行側から見てすでに清算が終わったのです。

この現実を「国の借金ガー」の連中は直視すべきです。