支給額は「テクノロジーの進化に応じて」なのです。
インフレが生じるのは、需要に対して供給が不足するからです。テクノロジーが進化すれば、生産性が向上することにより供給力が増大します。供給力の増大に合わせて通貨の供給を増大させるなら、経済規模が拡大するだけであって、インフレ率は低く抑えられます。さらに、貯蓄によって通貨が退蔵されたしまう(貯めこんで使われなくなる)点も考慮すれば、それ以上に通貨は供給されるべきでしょう。
一方、テクノロジーの進化に伴って生産性が向上しても、資源が不足すれば供給力を伸ばすことは難しくなります。しかしこれもテクノロジーの進化に伴って徐々に解消されます。その一つはリサイクル技術です。資源を使い捨てていれば、やがて資源が枯渇することは明白です。ですから目標として100%リサイクルを目指す必要があります。
またエネルギー資源については、太陽光を主体とする再生可能エネルギーの利用技術の向上があります。太陽エネルギーは膨大であり、課題はそれを利用するための技術開発だけです。また希少資源に頼ることなく、ごくありふれた物質を資源として利用する、代替資源の技術も有効です。そこらへんにある石、雑草、空気中の二酸化炭素などを資源化するわけです。これにより利用可能な資源の量が増大します。
もちろん、こうした技術の開発には費用も時間も必要です。ですから、一足飛びにベーシックインカムの支給額を増やすのではなく、こうしたベーシックインカムの持続可能性を高めるための技術の進化のスピードを考慮しつつ増やす必要があるわけです。
また、人々の生活が十分に豊かになれば、それほどおカネを必要としなくなると考えられます。ですから長期的にみると、支給額の伸びは徐々に低下し、あまり伸びなくなるのは自然なことです。とはいえ、人々が浪費をしたり、資源を貯めこんだりするなら、必要とする資源に際限がありません。全人類が宇宙旅行などしたら、地球の資源はいくらあっても足りません。ですから、満足すること、足るを知ることも重要です。学校等でそうした道徳教育も大切でしょう。
それと同時に、世界の人口爆発についても考慮が必要になるでしょう。先進諸国では少子化がすすみ、人口は減少傾向にあるものの、アジアの一部の地域や、とりわけアフリカが急激に人口を増やしつつあります。そうした人々も生活の豊かさを求める権利はあるわけですが、爆発的に増加する人々の権利まですべて保障できるほどに地球の資源があるとは思えません。人口増加に歯止めを掛ける方法を早急に検討すべきでしょう。
ただし、短期的あるいは地域的に言えば、日本におけるデフレを解消して経済を活性化することを考えるなら、テクノロジーの進化や人口爆発まで考慮する必要は無く、当面はインフレターゲットを用いて、供給力と支給額のバランスを取ればよいでしょう。
ベーシックインカムの持続可能性については、拙著でも取り上げています。