最低賃金水準が低すぎるとの労働者たちの批判を受けて、アマゾンは最低時給を15ドルに引き上げる決定をした。これを労働者の勝利と捕らえる人もいますが、本当にそうなのでしょうか。
もし、私がある大企業の経営者だったらどうするか?最低賃金を率先して15ドルに引き上げ、さらなる引き上げも検討する、と発表しますね。それで、世間の会社に対する評価が高くなりますし、ブランドが向上するかも知れません。社長個人の名前も売れます。売り上げの拡大が期待できます。
その一方で、機械の導入を進めます。もちろん、それは内緒w。仮に自給が30%引きあがったとしても、人工知能やロボットを導入することで30%の従業員を解雇すれば、利益率には影響しません。50%の従業員を解雇すれば、賃金を2倍に増やせますので「どうです、わが社は最低賃金を2倍にした、労働者のための会社でしょう」と、世間の喝采を浴びることが出来ます。
労働者たちは、企業に圧力をかけて高い賃金をもぎ取ったと、戦果に意気揚々かもしれませんが、労働者全体で見た場合、失業者が増える可能性があるのです。つまり、時代が変わったのです。
時代が変われば、やり方も変えなければならないと思います。労働者の賃金を上げる方法であれば、それは、労働の価値に依存しなければなりません。今や労働の価値がテクノロジーの進化に伴って、どんどん低下しているのです。企業VS労働者という古典的なミクロの構造ではなく、もっと大きな、社会システムのレベル、マクロのレベルで庶民全体の所得の向上を図る必要が出てきました。
労働組合や活動家は、旧来のような労働の枠組みを超えて、社会全体のシステムとして、所得の向上を目指すべき時代になったと思うのです。