2018年10月2日火曜日

崩壊しないバブル景気をヘリマネで

バブル景気を知らない世代は、マスコミの誘導もあって、バブル期を単に忌まわしいだけの時代だと思っているかも知れません。しかしそうではありません。バブル経済の功罪を正しく理解することが大切でしょう。

バブル経済は必ず崩壊します。崩壊して長期的なデフレ不況を招き、多くの人を苦しめますから、バブル経済は決して歓迎すべきものではありません。しかし、バブル景気における当時の経済状況は、決して人々を不幸にするものではありませんでした。バブルの時代はどうだったのでしょうか?

一言で言えば「景気がむちゃくちゃ良い」。いま、アベノミクスで戦後最長の経済拡張期だ、などと評する人もいますが、笑ってしまいます。こんなものは好景気とは言えません。バブル経済の時代を知らないから、そんな暢気なことが言えるのでしょう。バブル景気に比べれば、アベノミクスは水増ししたオレンジジュースのようなものです。

バブル期は「一億総中流社会」などと呼ばれました。バブル期において多くの国民の所得が増加し、中間所得層が増加し、低所得層は減少したのです。当時は貧困や格差が社会問題として大きくクローズアップされた記憶はありませんし、もちろん「子供の貧困」など聞いた事もありませんでした。仮に貧困があったとしても、景気が良くて税収が潤沢ですから、社会保障によって手当てすることは容易だったはずです。財源ガー、借金ガーとは無縁です。

当時も人手不足だと騒がれました。しかし、人手不足が経済の足を引っ張るなんてことは、まったくありませんでしたね。そして、人手不足を背景として、賃金が上昇し、とりわけ、アルバイトのような非正規雇用(短期雇用)の賃金がすごく良かったのです。若年者なら正社員よりも良いくらいでした。そのため、正社員にならず、フリーのアルバイター(フリーター)として、おカネにゆとりのある生活を送る人もいました。あの時代こそが、多様な働き方の時代です。

おカネにゆとりがあるため、人々は高級品志向、本物志向になりました。これはムダな贅沢などではありません。質の高い商品、健康に良い食品、満足度の高いサービスを得ることができ、それは人々の生活を健康で豊かにしてくれるのです。それはおカネがあればこそ可能です。

もちろん、商品がどんどん売れれば、企業の投資も活発になります。それは新しい商品やサービスを生み出します。企業の活発な投資によって、企業の国際競争力も高まったでしょう。

当時はおカネがありましたから、多くの庶民がリゾート地へ、つまり地方へ人々がどんどん遊びに出かけました。これは地方の経済を活性化していたと思います。海に山に。今やカネのない庶民は「安近短」の旅行でおカネを使わなくなり、地方経済は外国人観光客だのみの状態です。観光業ですら「外需依存」です。

では、そうした「景気がむちゃくちゃ良い」状況がなぜ生じたのでしょうか?世の中におカネが溢れていたためと考えられます。実際、マネーストック統計を見ればわかりますが、バブル期のマネーストックの伸び(増加率)は、今の3倍くらいあります。それだけおカネが増えれば、当然ながら庶民の懐にもおカネが流れ込んできます。

では、このおカネはどこから出てきたのか?それは「借金」です。すべてのおカネは借金から出来ていますので、当然と言えば当然です。では誰の借金なのかと言えば、一つは投機筋(マネーゲーム)、もう一つは企業(実物経済)です。

バブルは、もう少し詳しく言えば、資産バブルになります。金融資産(株式、証券)、不動産(土地建物)あるいは先物(石油、金属資源)といった資産が、市場で転売され、価格がどんどん上昇する状態です。この取引は、銀行からカネを借りることで、活発に行われます。借金によって、膨大なおカネが発生します。

そして、これはあくまで「借金」なのですが、驚くべきことに、資産が上昇を続ける限り、借金で資産を売買する過程で、借金が「売買差益」つまり利益に化けます。この利益が世の中にどんどん流れ出してきます。これがバブル景気を支えます。

景気が良くなると、それは企業活動にも影響し、企業の投資が増加します。企業はさらなる売り上げ拡大を目指して商品を開発したり、生産ラインを増強します。ただしこの投資も銀行からの借金によって賄われますから、世の中全体の借金はますます増加します。

ところが、資産価格が天井知らずで上昇するなどあり得ません。実体経済の成長を超えて通貨が増え続ければインフレを招きますから、中央銀行が必ず金利の引き締めにかかります。こうして借金して資産を売買しても利ざやが抜けなくなると、ある時点で、売りが売りを呼び、資産価格が連鎖崩壊します。これは避けられません。

バブルが崩壊すると、あれだけ景気が良かったにもかかわらず、あっというまにデフレ不況になります。生産設備も労働力も、バブル崩壊の前後で何も変りません。供給能力は十分にあるのです。にもかかわらず、供給システムが機能不全を起こして、不況になります。カネが動かなくなるという理由だけで。

ですから、バブル景気は絶対に永続できませんし、意図して引き起こすべきでもありません。しかし、バブル期における好景気は悪いものではなく、むしろ歓迎すべきものです。では、バブル期のような好景気を、バブルに頼ることなく起こすことができるのでしょうか。考えてみてください。バブル期を支えたのは「マネーストックの伸び」です。マネーストックを伸ばせば、間違いなく景気が良くなるのです。

ただし、今までの古典的な手法(金融政策)であれば、おカネを増やすには誰かが大量に借金をするしか方法がありません。だから日銀が量的緩和をやって必死に貸し出し金利を下げています。バブル経済の時は、企業、投機筋が莫大な借金をしました。しかし今やそれは無理です。あるいは政府が借金することでおカネは作れますが、すでに景気対策のために、政府が膨大な国債を発行しておカネを作り出してきました。もう、これ以上、誰かに借金を押し付けることは難しいでしょう。では、どうやっておカネを増やすのか?

ヘリコプターマネーです。政府がおカネを発行するのです。

と言っても、無制限にカネを発行しろというのではありません。マネーストックの伸びを今の2倍にするだけでも年間30兆円くらいのおカネができます。これを国民に配るわけです。それでもバブル期のおカネの伸び率には及びません。そんなに心配なら、まず年間15兆円程度(国民1人当たり毎月1万円)から始めてみれば良いと思います。

ヘリコプターマネーによって、決して崩壊しない、バブル期並みの好景気を実現しましょう。これなら、バブル経済のように、突然に崩壊しておカネが回らなくなる心配はまったくありません。もし、心配する必要があるとすれば、それはヘリマネがバブルを誘発するリスクです。こうしたリスクに対しては、あらかじめソブリンマネーを導入することで完全に防止することが可能になるでしょう。

本編サイトにも同時掲載