2021年2月14日日曜日

そもそも現代社会は借金で成り立っている

 先日も、財務大臣が「将来世代の借金を増やすのか」と財政出動に否定的な発言をしていたが、こんなもの、ちゃんちゃらおかしいの一言である。なぜなら、現代社会は借金で成り立っているからである。

 現代社会が借金で成り立っていることは、以前から一部の識者の間では常識だったが、最近はMMT(現代貨幣理論)のおかげで、その事実が広く国民に浸透しつつある。別に陰謀論でもなんでもない、金融システムが、そういう制度設計になっているのである。事実から目を逸らさず、真剣に向き合えば、すべての国民が「現代社会は借金で成り立っている」ことが理解できる。

 「現代社会は借金で成り立っている」とはどういう事か?世の中のカネは(ほぼ)すべてが銀行からの借金によって作られているのである。銀行が誰かにおカネを貸し出す際に、新たに預金通貨を発行し、それを貸し出すことで世の中のおカネが増えるのである。逆に言えば、誰かが銀行から借金を負い続けなければ、世の中のおカネが(ほぼ)すべて消えてなくなり、経済が崩壊するのである。

 財務大臣の上げ足を取るなら、将来世代の借金を増やすのはいけないどころか「銀行から借金をしないと、将来世代の経済が崩壊する」のである。耳を疑うかも知れないが、現代の金融システムをしっかり勉強すれば、あたりまえの話である。無知とは恐ろしいものであり、というか、無知であるがゆえに、「財政再建しなければならない」などと考え、自分の足元をぶち壊して平気でいられるのである。

 もちろん、ここには「誰が借金すべきか」という選択肢が存在する。マクロにおける経済主体は「政府」「家計」「企業」「海外」があり、必ずしも政府が借金しなければならないわけではない。このうちのどれか(複数選択可能)が借金を負えば経済は成り立つのである。

 バブル崩壊前の時代には、「企業」が銀行から巨額の借金を負っていた。そのため世の中にはおカネが溢れ、非常に景気が良かった。ところが、バブル崩壊後は、多くの企業がバブル期に借りた借金の返済に苦しんだため、借金をしたがらなくなった。

 そうなると景気は一向に回復せず、やむを得ず、政府が銀行から借金をして(国債を市中消化して)、財政出動を行った。ところが、国債の発行残高がどんどん増えるものだから、こんどは財務省がすっかりビビッてしまい、借金はしたくない、財政再建すると言い出した。

 「企業」も「政府」も借金をしたがらないなら、家計が借金するしかない。しかし家計が借金を増やすとなると、それこそ、直接的な意味で「将来世代の借金」が増えることになる。家計が借金漬け、ローン地獄になることを意味する。

 つまり、消去法によっても、政府が銀行から借金を増やさなければならないのである。そして、政府が借金を増やすことこそ、最も合理的である。なぜなら、企業や家計はおカネを発行することができないために、収入以上の借金を抱えると破綻してしまうが、国家(=政府=日本銀行)は通貨を発行できるため、破綻することはないからである。

企業も家計も破綻リスクがあるために借金を増やせないが、破綻リスクのない政府は借金を増やすことができる。

 現代社会は借金によって成り立っている。世の中から借金を無くすれば、経済が崩壊する。だから、企業も家計も借金を増やせない状況にあるならば、政府が借金を増やすのは、当然なのである。そんなに政府の借金が嫌なら、中央銀行制度に代わって、政府通貨制度(ソブリンマネー制)を導入しなければならない。政府通貨制度にすれば、誰の借金も増やすことなく、世の中のおカネを増やすことができるからである。