2021年2月6日土曜日

自己責任論は〇〇の一つ覚え

  性懲りもなく登場してくる、いわゆる「自己責任論者」であるが、彼らの主張は「それは自己責任だ」の一点張りで、多面的な分析も考察もない。ただ単に「自分で解決しろ」「社会のせいにするな」「お前の能力が低いだけだ」「努力が足りない」というだけで、考え方にまったく深みが無く、まさに〇〇の一つ覚えのフレーズを繰り返すだけである。

 なぜ彼らが短絡的であるのか?その理由は簡単である。彼らの発言の動機の多くは、社会をより良くするためではなく、自分の欲求不満状態を解消するために、救いを求める弱者を非難し、弱者を困らせることで快感を得ることにあるからだ。いじめることが目的なのだ。だから、深い考えなどない。

 そもそも、なぜ「自己責任だ」というワンフレーズの繰り返しが通用するのか?それは自己責任という考えが正しいからではなく、現在の社会が自己責任社会であるからだ。つまり、競争原理の支配する資本主義・市場経済であるからだ。もし、社会経済システムが共生社会に変われば、「自己責任」というフレーズは通用しないどころか、とんでも論になるのである。自己責任論者は「社会のせいにするな」というが、まさに、社会がそうだからこそ、自己責任が通用するにすぎないのだ。

そして、自己責任社会とは無政府状態であり、彼らは無政府主義者でもある。

 なぜなら、自己責任においては、すべては自分の責任であり、権利が法によって守られる必要が無いからだ。あらゆる権利概念、例えば「所有権」も存在しない。所有権は所有物を法によって守られるが、自己責任社会では、所有物を守るのは自分の責任であって、強盗や詐欺によって所有物を奪われたとしても、それは自己責任である。武力をもって守れない自分が悪いのである。

 もし、自己責任社会が理想社会であると考えているなら、その理由を示すべきだが、明確な理由は見たことが無い。もし自己責任社会が理想であるなら、多様性とか、共生社会に対しても、強く否定すべきであろう。自己責任なのだから、他人を助ける必要もない。

 多少なりとも理性的であれば理解できることだが、人工知能やロボットが高度に進化すると、やがて大量の労働者が失業することになる。労働市場では労働の価値が非常に低くなるので、賃金も極めて安くなる。その一方で、ごく一部の労働者や資本家が富を独占するようになる。これを「自己責任だ」と言って、自助努力にまかせていても、まったく解決しない。量子コンピュータの人工知能や、コストが人間の10分の一で24時間で働くロボットに勝てる奴がいるだろうか?まだ完全にそうなってはいないが、今日の社会は格差が拡大し、賃金も伸びない。すでに、そうした状況になりつつあるのだ。

 いわゆる自己責任論者は、もう少し頭を使った方が良い。