2019年6月3日月曜日

政府が借金せずに、誰が借金するのか?

世の中のすべてのおカネは、銀行からの借金によって作られる。それが今日の準備預金制度である。もし、政府が借金を負わないのであれば、いったい誰が借金するというのか?

もちろん、正確に言えば、日本政府が発行している10円や100円のような硬貨は、政府通貨であるため、これらは銀行から借金しなくても世の中に供給することができる。しかし、現金・預金およそ900兆円のうち、硬貨はわずか5兆円にも満たない。つまり、すべてのおカネは、銀行からの借金によって作られていると言って、ほとんど間違いはない。

今は、まだ、デフレである。政府はデフレを脱却したというが、たかだか2%のインフレ目標すら達成できない状況だ。つまり、おカネが足りないのだ。もちろん、おカネがまったくないわけではないが、大企業や資産家が貯めこんでいるので、庶民には回ってこない。とはいえ、貯めこんでいる資産を税として徴収し、再分配するのは、かなり困難な状況にある。

そうした状況の中で、政府の借金を減らすと、つまり、財政再建と称して、国債の発行残高を減らすとどうなるのか?世の中のおカネはすべて借金から作られているので、政府の借金を減らせば、間違いなく、世の中のおカネの量が減ることになる。それでなくとも、デフレで世の中のおカネの量が不足しているというのに、おカネの量を減らせば、景気が悪化し、ますますデフレ不況が酷くなることは明らかだ。

MMT(現代貨幣理論)において、もっとも基本的、かつ、重要な視点はそこにあると思う。MMTの貨幣理論は、「おカネは負債によって供給されている」という点を、これまでの経済学のように、ごまかすのではなく、正面からきちんと捉えた正しい姿勢である。もちろん、そこから導き出される話(たとえば、政府の借金はいくらあっても問題ないなど)には、賛否があるだろうが、基本部分である、おカネの理論はまったく間違いがない。

世の中のおカネは、すべて銀行からの借金によって作られている。だから、誰かが銀行から借金しなければ、経済が成り立たない仕組みになってるのだ。とは言っても、家計が借金を増やせば、破産する人が続出して大変なことになるし、一方、企業は借金をしたがらない、それどころか、内部留保を貯めこんでいる状況だ。まさか、いまさら貿易黒字をどんどん拡大して、海外に借金を負わせることも難しい。

では、誰が借金を負うのか?現在の経済システムは「誰かが借金しなければ、破綻する経済システム」なのだから、政府の借金が良いとか悪いとか、そんな話ではない。良い悪いに関わらず、政府が負うしかないのである。それとも、企業や資産家が貯めこんでいるおカネに課税するというのか。できない、いや、そもそも、やる気がないではないか。

一方で、日銀の金融緩和政策は、企業の借金を増やす政策である。企業の借金が増えれば、なにも政府が借金して、世の中におカネを供給する必要はない。だから、企業が借金を増やすよう、金利を引き下げ、貸し出しを増やそうと必死になっている。おカネの量を増やそうとしているのだ。

にもかかわらず、政府自民党、財務省のように、消費税を増税し、財政再建と称して、世の中のおカネの量を減らそうとすることは、まさに「逆噴射」に他ならない。もちろん、経済が失速して墜落したとしても、何の不思議もない。当然である。そうなれば財務省の責任は免れないと、いまから世間に十分に周知した上で、財政再建していただきたいものだ。