2019年6月17日月曜日

老後に備えてカネを貯めるとは?

老後に備えてカネを貯める「貯蓄型の年金制度」とは、どんな意味を持つのでしょうか?はたして、経済にとって良いことなのでしょうか?ちょっと考えてみました。

政府が「年金じゃ足りないから、老後のために2000万円を貯めろ」という発表をしたものだから、おおさわぎになっています。失われた20年で、サラリーマンの年収は減り続けているというのに、2000万円なんか貯められません。貯めることができるのは、公務員くらいじゃないでしょうか。国民を馬鹿にしていますね。

それはさておき、老後のために、みんなが貯蓄するようになったらどうなるでしょうか?「貯蓄する」ということは、その分だけ消費を減らすことを意味します。

今の日本経済は、デフレ不況、つまり消費が足りないことが不況の原因です。そんな状況で、みなさんが老後のために、さらに消費を減らしたらどうなるでしょう?子供でもわかりますね。つまり、「老後の資金を貯める」という、貯蓄型の年金制度は、今日の日本経済に悪影響を及ぼすと考えられます。

しかし、これがインフレの時代だったらどうでしょうか?インフレの時代では、モノが不足していますから、むしろ消費は抑えた方がよいわけです。インフレの際に、もし高齢者に年金を支給したらどうなるでしょう?ますますインフレになってしまいます。インフレを誘発しないように、年金を支給するにはどうするか?

たとえば、若い人が老後に備えて年金を貯めるなら、その分だけ消費が減ります。その減った分だけ、高齢者が年金で消費をすることができます。つまり、若い人に、消費を先送りしてもらうことで、現在の高齢者が消費を増やすことができるわけです。つまり、「供給力が不足している場合」「インフレ期」には、貯蓄型の年金制度は効果的だと考えられるわけです。

また、インフレ期における貯蓄の有効性は、他にも考えられます。貯蓄によって消費を抑えれば、消費財の生産が減りますので、その分だけ資源を生産財の生産にまわすことができます。設備投資や技術開発です。これは生産資本の蓄積になります。そのことが将来において供給力を高めることに繋がりますから、仮に、いま消費を抑えたとしても、将来にはより豊かになる可能性もあると考えられるわけです。これは供給力の不足しているインフレの時代には、とても有効だと思われます。

ところが、デフレの時代では、貯蓄によって消費を抑えても、実体経済への投資が増える(生産資本の蓄積)わけではありません。資源が余るだけであって、まったく意味が無いわけです。あるいは、貯蓄が投機に向けられてしまうだけです。

このように考えると、デフレのままでは、貯蓄型の年金制度は、経済にとって害になるだけだと考えられるわけです。では、どうすればいいのでしょうか。

インフレ、つまり、消費を活発化して、やや供給不足の状況を作り出せば、仮に貯蓄型の年金であっても、機能する可能性はあると思います。具体的には「カネを発行して国民に配る」ことです。これにより、消費が拡大すれば、インフレ傾向になります。そして、国民の所得も増大しますので、国民が所得の一部を貯蓄するだけのゆとりが生まれると考えられます。

また同時に、消費が増えれば企業の投資も活発化すると思われますので、資源が生産資本の拡充へと向けられることになり、将来における供給力の向上、すなわち、豊かな社会へ向かうことになるはずです。

すなわち結論としては、いまは、「老後に備えてカネを貯める」だけだと、まったく逆効果であり、実体経済が衰退して、年金は実質的に破綻すると思われます。

まず何より、おカネを発行して国民に配ることが重要であると思われます。そして消費が拡大し、経済が拡大するなかで、あらためて「老後に備えてカネを貯める」のが良いと思われるのです。

とはいえ、ベーシックインカム制度が完全に導入されるようになれば、おカネを貯める必要は、なくなるんですけどね。それまでには、もう少し時間が必要なので。