2022年5月6日金曜日

円安、為替操作より国民に給付金を

急激な円安を受けて、日銀の金融緩和を批判するマスコミ論者があふれている。しかし単に金利引き上げで円安を和らげ、短期的に輸入物価の上昇を抑えたとしても、経済の根本的な問題は何も解決できません。ところが、ネット民の多くはそのことを理解できないようです。

ネット世論を調査する目的で、最近は時々Yahooニュースにコメントを書いて、そのコメントに対するネット民からの反応を観察しています。

それによると、ネット民の多くは、円安を非常に不満に感じているらしいことがわかります。これは、マスコミの報道が「円安=輸入インフレ=生活苦」のような、ほとんど円安のデメリットにばかり偏っていることが深く影響していると思われます。その結果、多くのネット民は、日銀が金利を引き上げるなどして「円安を解消すべき」と考えているらしい。自分は金利による為替操作はせずに、国民にカネを配って国民の所得を底上げする方が良いとコメントを書いたのですが、非常に不評でしたw。

しかし、良く考えてみましょう。そもそも、なぜ日銀がかたくなに金融緩和をやめないのか?日本が不況のままだからです。消費がぜんぜん回復していない。輸入価格が上昇して、わずかにインフレ傾向にあるだけです。アメリカのようにモノがバンバン売れてインフレになるようなら、日銀もとっくに利上げしているでしょう。つまり、「消費が増えて、景気が良くなれば、金利を上げるのが当たり前になる」のです。では、どうすれば消費が増えるのか?まだコロナの影響が残っているとはいえ、国民におカネを配れば、消費が増える。外出しなくとも、ネットでさまざまな商品を購入できる時代なのです。

そして、消費が増えてインフレになれば、日銀は金利を引き上げることになりますから、日米の金利差が縮小し、円安は緩和されます。国民への給付金政策は、景気回復と金利引き上げを実現する一石二鳥の方法です。財源に税金を使う必要はありません。日銀が政府と調整し、永久国債を引き受ければ良いだけの話です。

ところが、大多数のネット民にとって給付金政策はあまり人気がなく、とにかく、円安を解消することばかりに関心があるようです。しかし、仮に日銀が金利を引き上げて円安を解消したところで、景気が良くなるわけではありません。経済の基本基調がデフレ不況のままです。経済成長も望めなければ、賃上げも望めないでしょう。モノが売れなきゃ、賃上げなどできるはずがないのです。

このように、目の前の問題にばかり目を奪われ、喉元過ぎれば熱さを忘れる、またしてもデフレ日本に逆戻り、いや、スタグフレーションの日本になる恐れもあるでしょう。

大部分のマスコミ有識者は、長期的、大局的に経済を見ることができません。今回の円安も、単に日銀の金利政策が原因としか考えていないでしょう。ところが、バブルの時代からずっと長期的に考えてみれば、失われた20年のデフレ放置や民主党政権時代の超円高による製造業の海外移転の加速、金融緩和の遅れといったことが、伏線として脈々と流れている。こうした大きな流れを理解できず、目の前の為替相場で騒ぐだけ。これがネット民に伝染し、愚かな世論を形成していると思われるのです。

それにしても、日銀の頭の悪さには驚くものがあります。前任の白川総裁の時代は「日銀は物価をコントロールできない」などと称してデフレ脱却を投げ出し、諸外国の大規模な金融緩和に後れをとって、民主党政権時代の危機的な円高を容認してしまった。と、次の黒田総裁は、白川総裁とはまるで反対に「金利政策万能論者」に変貌し、ひたすら金利政策でデフレ脱却、経済のコントロールをやろうとする。なんで日本には、こういう極端な連中ばかりいるのだろう。

もう、いいかげんに「すべて金利政策に頼る」のはやめるべきです。これからの新しい時代は「おカネ(マネーストック)の供給は、財政政策と金利政策を並行して行う」ことが、金融の安定化とデフレ・ディスインフレの防止の観点から中心になると思う。つまり、二階建て金融システムです。