2017年7月19日水曜日

マスコミの財政収支議論は空理空論

またまた新聞マスコミが「基礎的財政収支が赤字だ」と騒いでいます。しかしその内容はほとんど空理空論。前提となる考えが古過ぎるため今日の時代に合わないのです。

21世紀になり、日本をはじめとする現代の先進国経済はデフレが基調となっています。長期停滞論にもあるように、均衡金利はマイナスです。貯蓄がどんどん増え続ける事態を避けることが難しい。こうした経済状況にあって、まるで前世紀のインフレ時代と同じ前提で財政収支を論じても、もはや通用しません。財政収支を均衡させるために歳出を減らして消費税を増税する考えは、おそらく日本経済に「均衡縮小」という害悪をもたらすだけでしょう。

21世紀における日本のマクロ環境は、インフレ基調からデフレ基調へ180度変化したのです。ゆえに新たな財政収支の方法論もこれまでの方法から180度変えなければなりません。まさにコペルニクス的転回が必要です。それは、

①税収はフローからストックへ
②通貨は信用から100%マネーへ

①インフレ時代の税収はもっぱらフロー(循環する通貨)への課税が主流でした。それが所得税、消費税、法人税などです。これらはフローに応じて課税する方式です。そのため、循環する通貨の量が低下すると必然的に税収が減少してしまいます。

インフレ基調の時代は通貨の循環量が増加しやすい性質がありました。だからこそインフレになるのです。ですからインフレ時代にはインフレを抑制するためにもフローに課税することが機能的だったと考えられます。しかしデフレ基調の時代になると、おカネが貯蓄によって退蔵するようになるため、循環する通貨が徐々に減少する性質に変わります。まさに180度、変わってしまったのです。つまり貯蓄が増加しやすい性質に変わったのですから、貯蓄つまりストックへ課税することが機能的だと考えられるのです。

②今までの通貨制度は市中銀行の信用創造によってすべての通貨が供給されてきました。日銀はその元になるベースマネーを発行していたに過ぎません。

インフレ基調の時代は企業の借り入れが増加する傾向にあるため、市中銀行の信用創造によって世の中のおカネはどんどん増え続け、その増えるおカネに乗って経済は拡大しました。しかしデフレ基調の時代になると企業の借り入れは減少し、その結果、信用収縮によって世の中のおカネが減り続ける事態が生じるようになりました。まさに180度、変わってしまったのです。世の中のおカネが減る事態を防ぐために、政府が借金して信用通貨の量を維持しなければならないのです。これが政府債務の増大する遠因なのです。

ですから、財政を健全化するためには、政府が借金することなく世の中の通貨の量を維持することのできる通貨制度、100%マネーに移行することが機能的だと考えられるのです。

残念ながら新聞マスコミには、こうした「インフレ基調からデフレ基調へ」というマクロ環境の決定的な変化がまったく考慮されていません。時代が変わり、21世紀になってもなお、相変わらず新聞マスコミは「頭の構造がインフレのまま」なのです。

このあたりの話は、もう少し丁寧にして、本編サイトの記事にでもしてみようと思います。