MMTという、一言で言えば「財政赤字なんか気にすんな」という政策が注目を集めていますが、そんなことしたら大変だという人も居ます。じゃあ、MMTと財政再建のどっちがマシか?
反対派の人は「MMTなんかやると、ハイパーインフレになる」という。MMTの考え方で言えば、自国通貨建て国債の場合、いざとなれば日銀が国債を買い取るから、財政破綻なんかしませんし、金利も上昇しません。だけど、国債を発行することは通貨を発行することでもあるため、通貨量が増えることになる。だからインフレになる可能性はあります。
とはいえ、単にインフレになる「だけ」ではない。増大した通貨が消費を刺激し、需要が伸びるからこそインフレになるのです。確かに物価は上昇するが、同時に財の生産活動が非常に活発になり、名目賃金がどんどん増加します。名目GDP成長率はインフレ率も含まれるので、仮にインフレ率が10%を超える高インフレの状態になったとしても、その場合は名目経済成長はそれこそ軽く10%を超えることになります。
ちなみに、名目GDPが成長すると、税収も自然に増えますので、実のところ、財政収支は改善したりします。
もちろん、限度がありますので、誰もハイパーインフレになるまで財政出動しろ、と言う話ではありませんね。バブル崩壊前の昭和時代の通貨供給率が年率10%程度ですから、その程度になるまでやればいいだけです。10%というと、年間100兆円くらいです。いや、そこまでやらなくても十分だと思いますけどね。
では、「MMTなんか、ヤバイからやめちまえ」と言って、財務省よろしく財政再建すると、どうなるでしょうか。
財政再建とは、政府の借金を返済すること、つまり政府の負債を縮小することですね。現代の通貨は、誰かが負債を負うことで発行される仕組みですから、政府の負債を減らせば、世の中の通貨の量が減ってしまいます。しかも、世の中のおカネの量をただ減らすのではなく、「消費税の増税」という形で、国民の購買力を直接に毀損するのです。
そのため、国民の購買力が低下し、消費も低下しますから、需要不足で物価はデフレ化します。いくら増税対策をやったところで、財政再建すれば結局は世の中のおカネの量が減るので、デフレ不況を避けることは本質的に不可能です。
デフレがどんな状態かは、すでにお分かりだと思いますが、簡単に言えば、皆さんの賃金が減り続け、失業者が増加し、ブラック企業が復活してきます。名目GDP成長率は低迷あるいは縮小に向かいます。
ちなみに、名目GDPが縮小すると、税収は悪化しますので、さらなる消費増税が必要な状況になるでしょう。
さて、MMT(国債は日銀が引き受けてくれるから、財政赤字は気にせず、財政出動して、景気が爆発的に良くなってインフレになる)と、財政再建(デフレ逆噴射の経済に逆戻りする)と、どっちがいいですか?