多くの人は、ベーシックインカムとは一つの統一された考えだと勘違いしているかも知れません。しかしベーシックインカムには考え方の違いによって、複数の種類があることをご理解いただく必要があります。
ベーシックインカムとは、最低所得保障、最低限の生活を保障する制度であると考えられています。多くのベーシックインカムがその意味では同じであったとしても、同じ制度にはなりません。例えば、保障される最低生活がどの程度なのか、それだけでも、考え方に違いがあります。
例えば、7万円で最低生活できると主張する人も居れば、それでは死なないだけであって不十分であり、10万円は必要だと考える人もいます。私は最低でも15万円なければ人間として生活しているとはいえないと考えています。
それだけではありません。財源にしても違いがあります。消費税を増税して財源にすべきとの人も居れば、所得税だ、あるいは私のように通貨発行益を加えるべきだとの考えもあります。
しかし、多くの人はまだまだ「ベーシックインカム」という言葉さえ聞き慣れないのであって、それを最低生活保障であると理解しているだけでも珍しいような状況です。とても、ベーシックインカムに多くの種類があるとは知りませんし、もちろん、歴史的な背景も何も知らないでしょう。
こうした中で、例によってマスコミがベーシックインカムの多様な意見を紹介するのではなく、彼らの都合に合わせて、特定のベーシックインカムを取り上げて「ベーシックインカムとはこうである」とのプロパガンダを開始するのではないか、との不安があります。とりわけ、マスコミは財務省にべったりですから(消費増税の翼賛報道からみて)、財務省に都合の良い、おかしな考えを広げるリスクはあると思います。
ベーシックインカムの種類にも様々な分類の仕方があると思いますが、例えば次のように分類することができると思います。詳しくは、本編サイトも参照ください。
①独占型(資本主義型)
生産の効率性を最大化することが目的となる。そのため、生産性の低い労働者には生産活動から「退場」いただき、死なない程度の最低生活を保障することで、残りの富を生産性の高い労働者と資本家によって独占する。よって、支給額は死なない程度。
②貧困型(清貧思想型)
少子高齢化によって、日本はもう成長しない、衰退する一方である。だから貧しくなることを受け入れよう。再分配を強化して、みんなで貧しくなろう。貧しいことは美しい、これからは精神の時代だ。という価値観を持つ。よって、支給額を増やしてはいけない。
③緊縮型(財政均衡型)
政府の負債を減らして財政再建することを最優先に考えている。そのためには消費増税が必要だが、単に増税するといえば、国民の反発を食うので、ベーシックインカムという社会保障制度を導入して、格差や貧困を解消するとの大義名分はとても役に立つ。ベーシックインカムによって、死なない程度に保障しながら、残りの税収を国債の返済に回す。「痛みを伴う改革」。
④未来社会型
テクノロジーの進化や資本蓄積によって供給力の十分に大きくなった未来社会では、人間の労働なしに財が供給されるようになる。だから、技術の進化に伴って、労働とは無関係に人々におカネが給付されるのは当然だ。よって支給額は、増え続けるべき。
これは、自分の分類なので、他にも分類方法はあるでしょう。しかし、傾向として、こうした違いがあることは、様々なベーシックインカムの主張を観察していると見えてきます。
ベーシックインカムと一口に言っても、実際には多くの考え方があることを知っていただきたいと思います。さもなければ、またまた、マスコミの誘導によって、おかしな方向へ世論が操作されてしまう恐れもあると思うのです。